原題
Exosomes-transferred LINC00668 Contributes to Thrombosis by Promoting NETs Formation in Inflammatory Bowel Disease.
背景:疫学研究では、炎症性腸疾患(IBD)と血栓症の高リスクとの間に関連性があることが示されているが、その根底にある機序は不明である。この研究は、好中球細胞外トラップ(NET)がIBDマウスで有意に増加し、血栓形成につながることを示している。IBDマウス由来のエキソソームもin vivoで血栓症を誘発した。さらに、炎症を起こした腸上皮細胞は、高レベルのLINC00668を含む分泌されたエキソソームを介してNETの放出を促進する。機構的には、LINC00668は好中球エラスターゼ(NE)の核への移行を促進し、NETの放出と血栓形成を誘導する。ベルベリンは、LINC00668とNEとの相互作用を阻害することによってNET形成を抑制し、IBD関連血栓症の潜在的な治療法となり得る。
方法:本研究では、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)により誘導されたIBDのマウスモデルを用いた。NETの形成を分析し、IBDマウスからの血しょうエキソソームを単離し、健康なマウスに注射して血栓を観察した。RNA配列決定を行い、炎症を起こした腸上皮細胞(IECs)とそのエキソソームに豊富に存在する遺伝子を同定した。LINC00668とNEの間の相互作用を調べた。NET形成に対するベルベリンの効果を評価した。
結果:DSS誘発IBDマウスではNET形成が増加し、IBDマウス由来の血しょうエキソソームは健康なマウスで血栓を誘発した。炎症を起こしたIECsは、高レベルのLINC00668を含むエキソソームを介してNET放出を促進した。LINC00668はNEの核への移行を促進し、NET放出と血栓形成を促進した。ベルベリンはLINC00668とNEの間の相互作用を阻害し、NET形成と血栓形成を減少させた。
結論:本研究は、エキソソームを介したNET形成を介してIBDと血栓を関連付ける新しいメカニズムを明らかにする。LINC00668を標的とすることは、IBD関連血栓症に対する新規の分子治療戦略となる可能性がある。
Journal: Adv Sci (Weinh) (CiteScore 2022: 19.8)
DOI: 10.1002/advs.202300560
PMID: 37590310
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