晩期泌尿生殖器毒性の分画サイズ感度:CHHiP試験におけるα/β(α/β)比の解析。

原題
The Fraction Size Sensitivity of Late Genitourinary Toxicity: Analysis of Alpha/Beta (α/β) Ratios in the CHHiP Trial.
背景:前立腺ガンに対する中等度寡分割の外部ビーム強度変調放射線治療(RT)は一般的であるが、尿生殖器エンドポイントに対するα/β比の推定値はほとんどない。本研究は、尿生殖器エンドポイントに対するα/β比の推定値を提供することを目的とした。
LKB-NoEQD2、LKB-EQD2、およびLKB-EQD2-DMFの3つのモデルを適合させて毒性を評価した。ブートストラップ法を用いて信頼区間を算出し、モデルを比較した。
結果:LKB-EQD2モデルは、排尿困難および血尿のエンドポイントのパフォーマンスを改善した。2つの用量調節因子を組み込むことで、これらのエンドポイントのモデルはさらに改善された。
結論:EQD 2補正を含めることにより、排尿困難および血尿のエンドポイントに対するモデルの適合性が改善された。推定されたα/β比は、寡分割が泌尿生殖器毒性に対して以前に想定されていたよりも低い治療効果をもたらす可能性があることを示唆している。
Journal: Int J Radiat Oncol Biol Phys (CiteScore 2022: 11)
DOI: 10.1016/j.ijrobp.2022.08.030
PMID: 35985457
Open Access

感想
前立腺癌のα/β比はだいたい1.5 Gy、というのが放射線治療医のコンセンサスだと思う。それに対して正常組織の、特にその晩期有害事象のα/β比は3~5 Gyというのが一般的な認識だと思う。一般的な悪性腫瘍はα/β比が10 Gy以上なので、1回線量を2 Gyより増やすと治療効果を同等に保てない、もしくは有害事象が強く出てしまう。前立腺癌、乳癌(たぶんGBMなどの脳腫瘍も)は特殊で、α/β比が低いため、1回線量を増やして照射回数を減らしても(寡分割照射)、有害事象が増えないし、治療効果が下がらない、と考えられてきた。
有害事象も治療効果も同等で、治療期間が短縮できるならば、中程度寡分割照射は非常に有用な照射だと思う。しかし理論的には前立腺癌の寡分割照射は、治療効果が同等で有害事象が減るはずなのだが、複数の中程度寡分割の第3相試験でそれは確認されなかった。この論文では、臨床医の評価する有害事象(CRO)と治療計画のDICOMデータをもとに膀胱のα/β比が推定された。もともとは3216人が参加したCHHiP試験だが、データ不足などのためこの解析では2206人のデータが解析された。結果として、α/β比は0.6~2.0 Gyと推定され、特に血尿Grade 2については0.6 Gyと推定された。もしそうだとすると、3 Gy×20回の照射は、前立腺癌に対して77.1 Gy相当、膀胱に対して83.1 Gy相当、ということになる。CHHiP試験では有害事象は増えていないからよかったが、寡分割だから膀胱の線量は理論上減る、と考えていた治療医は、少し認識を改めないといけない。

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